痔瘻は一般的にあな痔と呼ばれることがありますが、イボ痔・切れ痔に比べるとあまり有名ではありません。
肛門と直腸の境-歯状線-には肛門陰窩という1mm程度のくぼみが6~11個あります。
このくぼみに細菌が入り込み、くぼみの先にある肛門腺が感染することがあります。
この感染が元で膿(うみ)が肛門・直腸周囲に広がり肛門周囲膿瘍となります。
たまった膿のたまりが自然に破れる、もしくは切開で排膿されると肛門陰窩→肛門腺の膿のたまり→排膿部という膿のトンネルが出来上がります。
この状態を痔瘻といいます。
痔瘻は保存療法で完治することはなく、手術が必要です。
放置していると、最終的には癌化するケースもあります。
硬い便で傷ついた粘膜に、下痢の細菌が潜り込む
肛門陰窩に細菌が潜り込む
強く押し出した便が肛門陰窩に潜り込む(男性が多い理由)
出産時のいきみで細菌がもぐりこむ
上記の症状がすべて当てはまらなくても痔ろうの場合があります。
特徴
特徴
特徴
特徴
痔瘻の治療は外科的療法が基本です。保存療法は肛門周囲膿瘍の膿瘍が完成していないごく初期、もしくは膿瘍が自然に破れたあとに行います。
痔ろう根治術には開放術式・括約筋温存術式・結紮法があります。開放術式・括約筋温存術式はメスを使い切開し、ろう管(膿の通り道)を解放して治療を進める方法です。
当院では患者さまの負担や、術後の括約筋の温存を考慮し、メスを使わず結紮法で治療を行っております。
便通の管理はどの痔にも共通する治療です。手術と並行して行っていきます。
膿のたまりの周辺に局所麻酔を注射で打ち、膿瘍部の皮膚を切開して膿を出します。
膿が出て、肛門内部~臀部(おしり)に膿の通り道となり、痔瘻と診断される状態になります。
以後の治療は痔瘻の治療に準じます。
当院では痔瘻結紮法・シートン法による治療を行っています。
膿の通り道(ろう管)にゴムを通して強く縛ります。ゴムは1~2週間で自然に取れます。
ゴムが取れた後、軟膏やタンポンガーゼで傷を感染から保護しながら治していきます。
膿の通り道(ろう管)にゴムを通してゆるく縛ります。ゴムの他に薬液をしみこませた糸を同時に使用する場合もあります。
ゴムは徐々にゆるくなっていくため、1~2週間ごとにゆるんだ分占めていきます。
筋間痔瘻で治療の経過を図にしました。
膿の通り道にゴムや糸を通します。
ゴムがろう管を矢印の方向に切り開き中の膿が排出される。
膿が出きらない場合は水で洗浄します。
ゆるんだ分をしめます。
きれいになったろう管がが深部からゆっくり治ります。
括約筋が治りながら治療するので排便障害はほとんどありません。
ゴムはさらに、しめていきます。
ゴムが取れたとき、表面に最後の切れた切開傷が残ります。
軟膏、ガーゼで保護しながら治療します。
この傷がふさがれば治療完了です。